スポンサーサイト

  • 2012.05.30 Wednesday
この広告は45日以上更新がないブログに表示されております。
新しい記事を書くことで広告を消すことができます。
  • 0
    • -
    • -
    • -
    • -

    1両だけの女性専用車両に反対する理由。そしてアファーマティヴアクションとしての男女専用車両について。:痴漢被害をどのように減らしていけるか。

    • 2011.12.13 Tuesday
    • 11:43
    1両だけの女性専用車両に反対する理由〜そしてアファーマティヴアクションとしての男女専用車両そして誰でも車両の導入について〜痴漢被害をどのように減らしていけるか。

    結論を先に纏めておくと、私は1両だけの女性専用車両に反対である。そうではなくて、アファーマテイヴアクションとして、通勤通学時間帯の朝7〜10時の痴漢多発時間帯に、偶数車両を女性専用車両、奇数車両全てを男性専用車両にすべきだと考える。そして車両数が奇数の場合は先頭車両を、性別に関わらず(男女あるいはそれ以外のセクシャリテイの人)が乗れる車両(誰でも車両の導入)にする。

    そして車両数が偶数の場合は先頭車両と二両目を同じく誰でも車両にすればよいと思う。また障害者と介助者のジェンダーが異なる場合は、どちらかのジェンダーに合わせて乗ればよいと思う。そしてそのこのAAをとる場合以下の条件を必要とする。

    30年限定の時限または、痴漢の認知件数が1/20程度、つまり、男性と同程度の痴漢認知件数に下がったらこの「隔離」措置を解除すべきだと思う。そして、この措置を解除しても痴漢認知件数が上昇しないように教育(性犯罪がヘイトクライムであるという認識の共有)・司法制度(痴漢に対する法律の厳罰化)の改正、そして何よりも痴漢の元凶となっている満員電車の解消を求める。30年あればできると思う。これらの条件をすべて整えた上で、私は偶数車両全てを女性専用車両、奇数すべてを男性専用車両そして、誰でも車両の導入するというAAを行うべきだと思う。

    またこの男女専用車両、そして誰でも車両の比率は常にその利用者数に応じて変更されるべきだと考える。また通勤時間帯でも、著しく混んでいない車両が女性専用車両にあるとするならば、その車両の女性による反対の声がない限りは、「女性」以外のセクシャリテイの人がそれを利用するのも認めていいのではないかと思う。「隔離」を原理主義的に行うのは「差別」である可能性があるので、それくらいの柔軟性は認められるべきだと思う。



    女性専用車両についてどう考えるかというのは、常に大きな論争になってきたテーマである。このテーマが論争的なのは、しばしば、賛成、反対両陣営が互いのその理由について大きな誤解をしているということがあげられる。簡潔に言えば、女性専用車両の導入の正当化は以下の前提全てを認めれば賛成派で少なくとも一つを否定すれば反対派ということになろう。
    (1) 痴漢は非常に深刻な性犯罪であり即座に何らかの対策が講じられるべきである。(2)その有効的な対策として今、運用されている女性専用車両は効果的である。(3)その対策を行うに際して予想される不利益は仕方がないから有無を言わず許容すべきだ。

    ここでしばしば誤解されるのが賛成派が反対派として想定しているのがこれらの前提のうちすべてを否定する人達であることが多い。この誤解によると、確かに、女性専用車両を認めないのは痴漢を大した問題と思っていない、あるいは、そのような問題をなかったことにしたい立場のセクシストということになるのだろう。私がこの議論でいつもおかしいと思うのは、この問題がなぜか「女性」のアクセス権の話に矮小化されている点である。これは全くの見当違いだと思う。

    この問題は「女性」という特殊な利害集団に対して特殊な利益を与えよという話ではなくて、自由の平等性という観点から考えた場合に、著しくそのアクセス権を奪われている集団が社会に存在しているという話で、「女性」はその不遇なグループの一つに過ぎない。であるから、この問題は自由の平等性に対する非対称性一般に関する議論でなければならない。つまり、「女性」のアクセス権だけが語られべきではなくて、同じように不利益を被っている「障害者」や男性ー女性という分類では定義できないセクシャルマイノリテイーに対してのアクセス権についても語られるべきだ。

    「女性」の権利の回復の為ににこれらの人達の利益が損なわれてはならない。そうではなくて、このような不利益を被っている人たち全てに対して権利の回復の為の措置が行われるべきである。今回の論考は焦点を女性専用車両に絞っているので、メインになる議論は男ー女という軸を中心に議論を進めるが、私はその他の人達の権利を無視しているのではなくて、むしろこれは特殊グループの問題ではなくて自由の不平等性に対する「正義」が問われている問題だと思う。したがって、メインテーマではないが、「女性」以外に平穏なアクセス権が侵害されているグループに対しての対策や、AAで生じるかもしれない不利益をどう減らしていくのかも議論するつもりである。

    しかし、そのような意味での反対派というのは非常に少ないと思う。多くのアンケートが示している様に男女とも女性専用車両の導入自体には反対という意見は少ない。
    アンケートにもよるが、おおむね女性は77〜80%前後が賛成で男性は60〜70%前後が賛成である。1そして(1)に対して反対と思われる女性専用車両反対派もごくわずかだと思われる。

    では反対派は何が反対なのか?というと(2)や(3)についてだと思われる、つまり理念に対してではなくて、その運用方法や実際の効果について疑問がある故に反対という立場の人が多いと思う。私は(3)は許容できない。私にとってはこれは正義の問題なので、「女性」という特殊集団の利益を回復するための措置をとる場合でも、同様に不利益を被っている障害者や他のセクシャリテイのグループに対する配慮が欠けてはならないと思う。このような理由で私は1両だけの、そしてAAの条件を満たしていない、「正義」ではなくて、特殊集団の利益拡大の為のように見える現在の女性専用車両という制度に反対するのである。

    私の立場も(2)と(3)については賛成とは言えない。(2)について簡潔に言えば、今、首都圏や関西のJR、地下鉄、私鉄などで導入されている“1両だけの女性専用車両”による痴漢対策効果は十分ではないと思う。私の考えはさらにラデイカルで、1両だけの女性専用車両ではなくて、偶数を女性専用車両、奇数を男性専用車両にするべきということである。つまり、私が反対なのは1両だけの女性専用車両ということである。また、この措置をいつまであるいはどのような目標を達成するまで行うのか?が明確になされていないという点である。これは後程考察することにする。

    そして、それ以外にもすべき対策があるはずでそれをしないで女性専用車両だけで解決できるとは思わないというのが私の考えである。それ以外の対策とは(1)教育で、性犯罪がヘイトクライムであるという認識(なぜなら性犯罪の被害者の95%以上は女性)を十分に社会全体で共有することや、そしてその他には(2)痴漢を罰する為の迷惑防止条例ではない代替となる法律の制定というのを考えるべきだと思う。(多くの場合痴漢者に強制わいせつ容疑を適用することは困難なので)2迷惑防止条例は、その罪の与える損害や影響に対して軽すぎるというのが私の印象である。また、そのような法律の策定が、社会の痴漢に対する認識を変えることができると考えている。そして最後に一番重要なのは満員電車の解消、これなくして痴漢対策は不可能。

    (2) についても、私はこの女性専用車両という措置が女性のアクセス権確保の為のアファーマテイヴアクションと考えているので、その要件を十分満たすべきだと思う。つまり、これが女性にとって被っていた損害の回復をもたらす対策であるからといって、それによる不利益は不問にされてよいとは思わない、私はこの不利益を最小限にしながらも女性の利益を守る方法を提案したい、つまり、私もこの女性専用車両が考案された背景や理念に反対しているわけではない。これが今回の記事の大まかなスケッチである。また冤罪についても必ず上がる話題だが、私は冤罪の問題は痴漢冤罪に限るものではないと考えている。これは司法全体の問題に思える。

    つまり、“男を陥れる為の女”がたくさんいるとは全然思わない。たしかに、そういう人もいるかもしれないが、ごくわずかで他の冤罪で起こりうる冤罪の発生件数それほど統計的に差異があるとも思えない。つまり、私は冤罪の問題は司法システムの一般的な問題の一つに過ぎないと考えている。

    なぜなら痴漢だけでなくて札事件でも冤罪は起きるし、今年で言えば村木氏に対する事件なども挙げられる。つまり、特に痴漢という犯罪に対して陥れる女が冤罪を大量に捏造しているという議論はあり得ないと考える。それが正しいとしたら、冤罪は痴漢に対してだけ起きているという証拠が必要だが、それは今上げた例ですでに反駁した。
    これがこれからの議論の主な概要である。

    (1) なぜ痴漢は重大な性犯罪ですぐにでも対策が打たれなければならないのか?
    痴漢というのは性犯罪の一つである。そして性犯罪がヘイトクライムであるから、これを放置しておくということは社会にとって大きな損害であると考えることができる。なぜなら、このヘイトクライムを放置するということは、国家や社会が女性の人権に対して極めて鈍感であり、この卑劣な暴力を野放しにしておくという著しい人権侵害を放置しておくということになる。そして、この人権侵害は犯罪被害者個人が著しい身体的精神的損害を被るというだけではなくて、女性がそのように男性に扱われるということが野放しにされるということは女性に対する有害な(女性は男性によって性的に搾取される存在であるという)性的ステレオタイプの再生産に加担することになり、女性差別を助長しかねないと思う。

    また、それだけではなくて、このような犯罪が多く存在することによって、男性VS女性という無意味な対立を生みかねない。なぜなら、性犯罪の被害者からしたら、圧倒的多数の犯罪を行っているのが男性であるにもかかわらず同じ男性は、その犯罪を黙って見過ごすつもりかそれでは、その犯罪者と同じではないか?と男性一般を非難したくなる気持ちは大いに理解できる。あるいは、そのような一般的な男性の性犯罪に対する鈍感な態度が性犯罪を起こさせる閾値を下げているのではないか?と考えたとしても不思議ではない。

    そして、損害は直接的な性犯罪被害者に留まらない。そのような痴漢に合わないように対策をしなければならない女性の精神的負担というのは社会にとって経済的損害となりえる。つまり、通勤の前から、そのような注意を常に周囲に払っていなければならないという状況に追い込まれている為に、会社に来る前からかなり精神的に疲弊してしまうということもあり得るし、そうなれば仕事の効率にも大きく影響してくる。ちなみに何らかの痴漢対策を講じているという女性は90%にも上る。3同様に、何らかの冤罪対策をしている男性も約半数に上る。4そして男性も女性同様に会社に行く前から精神的に疲労してしまっている可能性がある。もちろんどちらの場合も共通の敵は痴漢を犯す犯罪者である。

    そして警視庁の今年度の資料によれば、管轄内のすべての痴漢認知件数のうち電車内で起きているのは約70%にも上る。5その電車内の痴漢のうち7〜10時の混雑している通勤時間帯に一日のうち全被害のうち40%もの痴漢被害が報告されている。6つまり電車の混雑具合と痴漢の発生率は強い相関関係がある。また痴漢が深刻なのは、その認知件数に比べて暗数がきわめて多いことだ。法務省総合研究所の資料によると、性犯罪全体の暗数は認知件数の8〜9倍に上る。痴漢に関してはこれよりも少し高いと予想される。7

    あるアンケート調査によれば少なくとも1回以上痴漢電車内で被害にあったことがある女性は15%前後で同8%の男性を大きく引き離している。8しかも、この8%という数字にしても、多くは満員電車の中での犯行であり、痴漢犯罪者が男性を女性と間違えてその犯行を犯した可能性が否定できないということを考えると、また女性による男性に対する痴漢というのがほとんどないということから考えれば痴漢が特に女性という属性に対して行われるヘイトクライムという認識は間違えではないだろう。

    また別の調査によれば25%ほどの女性が少なくとも1回は痴漢に合っている、この場合電車内以外での痴漢も含む。9また「痴漢犯罪No!鉄道利用者の会」が行った女子高生に対する調査によれば電車内で少なくとも1回以上犯罪に会ったことがある女性は71%にも上る。10この調査はサンプルサイズが非常に少ないこと、とサンプルが一番被害者が多い10代であるということから考えて全体的にこのような傾向があると一般化することはできない。

    つまり、先ほど上げた25%というのが妥当と思われる。つまり、少なくとも4人に一人の女性が今までに何らかの痴漢被害に遭遇しているということである。これは痴漢が女性にとって非常に恐ろしい犯罪であるということがわかる。この性犯罪被害の非対称性が、痴漢という犯罪に対する男女の認識の違いを形成している一要因といえる。また、痴漢に対する男女の認識差が顕著なのは、この痴漢に対する恐怖という項目だけではなくて、それが女性に対する侮辱。蔑視であるという点である。11 

    つまり、痴漢という犯罪は女性にとってだけではなくて男性にとっても、また、すべての人にとって非常に有害なヘイトクライムであるといえる。故に即座に対策が打たれるべき問題である、という(1)の前提に対して反対する者はほとんどいないと思われる。

    冤罪に関して言えば、確かに冤罪であった場合にそれが無実であることを立証するのは極めて困難である。「痴漢冤罪救済ネットワーク」の調べによれば1990〜1999年の間に“容疑”を否認して裁判で戦った人は203名いるが、結果はすべて有罪であった。12最近ではわりと冤罪であることを認める判決が出てきてはいるが、それでもまだ、それが認められる可能性は極めて低い。

    このようなことが起きる原因を同ネットワークの荒木立教大学教授によれば、(自称)被害者によりその“被疑者”を駅事務所に同行して、痴漢犯罪者であると告げる行為が私人による現行犯逮捕として扱われているということにあるといえる。つまり、警察側も初めからこの男性を参考人あるいは重要参考人としてではなくて、被疑者として自白を迫る取り調べを行うことにあると述べている。これは痴漢だけに限らない冤罪に起きがちな行為といえる。

    あらかじめ被疑者と決めつけた相手に対して、そのような扱いをして、今度は検察がその被疑者にふさわしいストーリーを作り上げる。そして日本の有罪率の高さ99%という数字が示している様に、一度被疑者として取り調べられたらほぼ無罪になる可能性はない。つまり、これは司法制度の問題といえる。痴漢冤罪にだけ起きる現象ではない。

    またこのように冤罪は性犯罪とともに非常に重要な問題なのだが、それが性犯罪の解決に対して、優先するか?といわれれば、そうとも言えない、というか別の問題であると考えられる。性犯罪があろうがなかろうが冤罪は起きうるので、冤罪一般の問題は司法制度の問題である。であるから、痴漢冤罪に関しては冤罪一般の問題点を話すという文脈でしっかり議論されるべき内容であろう。つまり女性専用車両の問題とは全く関係がない。

    さて、ここまでの議論で(1)の前提についてはほぼすべての人が認識を共有できていると思われる。それに比べれば(2)と(3)の問題は運用上、手続き上の問題なのでさほど深刻な対立とは思われない。

    あらかじめ予告しておいたように、私は、今の1両だけを女性専用車両とすることには反対である。それは例えば、1両女性専用車両を作ることで、その他の車両の男性の密度は当然高くなることになる、とするならば、この1両だけの女性専用車両に座れない女性の痴漢に遭遇する確率が高くなることになってしまう。

    つまり、1両そういう車両を導入することでその他のすべての車両において痴漢の発生率が上がってしまい全体としては痴漢の認知件数が増えるというのであれば、その導入の効果に疑問が付されるのは事実だろう。実際に女性専用車両を導入後に痴漢の認知件数が増えている路線もあるということを考えれば私の批判が的外れではないといえるだろう。

    また、1両だけの導入というのは利便性という点でも疑問が残る。また私は1両だけそういう車両を作るということは、女性を男性から「隔離」していると考えることもでき、むしろ男性によって女性が社会から排除されていることの象徴的意味を持ちかねないと思う。

    そして、そのピンクという色で書かれた京王電鉄の女性専用車両という色使いもジェンダーに鈍感な感じが否めない。そのようなマーキングすることで女性を恣意的にレッテル貼りするという効果を持ちかねない。私と似たような批判はブラジルの女性団体が女性専用車両に対して行っている。13

    ではこのようなジェンダーに対する鈍感さという批判に答えつつ、さらに効果的に痴漢を減らすためにはどのように女性専用車両を運用したらいいのか?といえば、私は偶数車両全てを女性専用車、奇数車両全てを男性専用者とすることですべての車両で男女を「隔離」することで、すべての女性が女性専用車両に乗れるようにすべきだと思う、そしてこれによって全体としても1両だけそれを導入することで全体の痴漢認知件数が上昇してしまうというパラドクスを回避することができる。

    さて、問題はこれを度の様に正当化できるのか?という点である。これに対する私の答えはこれはアファーマテイヴアクションであると考えることができるというものである。なぜこれが女性特権ではなくてアフアーマテイヴアクションといえるのかといえば、この措置の目的は女性が男性にない特権を享受するということにあるわけではなくて、犯罪に合わずに平穏に通勤通学する権利、そしてそれによって被ると思われる社会的不利益に対する対策をするということ以上の意味がないからである。

    なぜ特権ではないかというと、これを仮に特権とするのならば、女性と比較した場合に性犯罪に合う可能性が劇的に低い男性はすでに平穏に通勤通学する権利という特権を得ているということになる。つまり、この措置は単に女性にも男性並みの平穏に通勤通学する権利を与えるべきだという議論である。しかし、問題は残る、何かというと、この権利がアファーマテイヴアクションとして正当化されるとしたら、そもそも、この措置がアファーマテイヴアクションが満たすべき条件を満たす必要がある。

    これは私の以前の「女性枠」をめぐる議論に関する記事http://yutakioka.jugem.jp/?eid=53で示しておいた通りのあの条件である。つまり(1)クオーター制ではない。(2)プログラムの目的と手段の適合性。また数値目標を設定する場合は、その数字の設定根拠の呈示。(3)プログラムの柔軟性。目的と手段の適合性が常に保たれるように措置を変更できることと言い換えてもいいだろう。(4)時限を設定する。(5)被差別集団の利益を必要以上に制限しないこと。を満たす必要がある。

    そして今の女性専用車両はこの場合(1)は関係がないとして、というのは移動の自由に関する話なので。(5)に関しては、今の1両だけ導入という制度ではこれを見たしているとは言えない、なぜなら、乗れる車両の数で言えば、男性だけが1車両分乗れなくなるという一方的な損害を被ることになるので、これが女性専用車両に反対する男性が男性差別と感じる点である、そしてその感覚は正当だ、当然あの措置がAAとしても、この条件(5)を満たしていない。ではどうするかこの措置自体を諦める必要があるのか?ない。

    じゃあどうするのかというと、先ほど私が提案した偶数、奇数で男女を完全に「隔離」すれば、男性、女性ともに乗れる車両の数は同数になる、車両数が奇数の場合は例えば先頭車両だけは男性でも女性でも乗れる車両ということにしておけばいい。

    そうすれば奇数の時と同様の車両数に男女ともが乗れる可能性があることになるので、この(5)の男性差別という批判を無効にできる。なぜなら、この場合男性も男性専用車両に乗ることで痴漢冤罪に会う確率を下げることができるから、そして冤罪対策の努力をする必要がなくなることは男性にとっても大きな利益。

    だから、私は1両の女性専用車両には反対なのである。しかも、このように「隔離」すれば、1両だけの女性専用車両よりも劇的な痴漢犯罪被害者を減らすことができるし、女性が女性専用車両に乗るためにわざわざ乗り換えから遠い場所にある車両に乗り込まなければならないという不満を解消することができる。偶数車両ならどこでも女性専用車両なので。またこのように女性専用車両を定めているので、特別なピンクのマーキングなど必要がない。これも女性団体からの批判にも答えられる。

    残るは(2)、(3)である。目的と手段の適合性についても、偶数車両全てを女性専用車両にすることで、全体としての痴漢発生件数を減らすという目的に対する手段としては適切といえる。1両だけを女性専用車両とするような時のようなパラドックスは起きない。また車両比率は随時利用者数に合わせて変更されるべきだ。そして、ジェンダーに関係ない誰でも車両を導入すべきだ。

    さて、次は(3)の条件である。私はこのAAの時限は30年に設定したい。30年限定の時限または、痴漢の認知件数が1/20程度、つまり、男性と同程度の痴漢認知件数に成ったらこの「隔離」措置を解除すべきだと思う。そして、この措置を解除しても痴漢認知件数が上昇しないように教育(性犯罪がヘイトクライムであるという認識の共有)・司法制度(痴漢に対する法律の厳罰化)の改正、そして何よりも痴漢の元凶となっている満員電車の解消を求める。30年あればできると思う。これらの条件をすべて整えた上で、私は偶数車両全てを女性専用車両、奇数すべてを男性専用車両にするというAAを行うべきだと思う。


    男ー女二元論を超えて、そして今後の課題について。

    これまで議論してきた内容は主に男ー女という図式での「女性」のアクセス権を度の様に擁護していったらよいのか?という話であった。しかし、アクセス権をめぐる問題はこのような単純な図式には還元されえないというのもまた事実である。セクシャリテイといっても同性愛、異性愛、両性愛、そしてトランスジェンダーという場合もあり得るほど人間のセクシャリテイは多様である。であるから、ここではメインのテーマとしては議題の俎上には上っていないが、性犯罪を男→女という形で権力関係という単純な構図には還元できないのである。

    男ー女という分類に当てはまらない人はどうすればよいのか?

    それぞれのセクシャリテイのアクセス権を考える上では、それぞれの権力関係の背景を別個に考えていく必要があるだろう。仮に車両を分けたとしても同性愛者による犯罪は起きうるだろうし、トランスジェンダーの人による犯罪が起きる場合もあり得る、それによる被害者も当然発生する。そのように考えるとこのような解決法だけでは、どうしても男ー女という区別で定義できる人の権利にのみ焦点を当ててしまっているという批判は免れ得ないだろう。

    この批判に対しては別途それぞれの状況に合わせた議論を今後していくつもりである。この議論では触れなかったが、それはこのような多様なセクシャリテイのあり方を無視しているというわけではなくて、別のフレームワークの元に別の背景を基に議論する必要があると考えたからである。男ー女という軸でそれを議論するというのはあまりに問題を単純化しすぎていると考えるので。ただし、この男女に当てはまらない人達の権利を無視することは絶対にできない。私はその対策としてだれでも車両を導入するべきだと考える。この誰でも車両はジェンダー、障害の有無などに関わらず誰でも乗れる車両として残す、今までの車両の良い部分は温存したい。

    障害者と介助者はどの車両に乗るべきなのか?

    そして、マイノリテイのアクセス権の平等ということであれば、当然知的・身体障害者あるいは車いす利用、なんらかの障害を抱える個人のアクセス権をどのように擁護すべきか?という問題があるのも事実だと思う。その問題についていえば、例えば今できる対策としては、すべての駅にエレベーターを設置する、点字による地図や案内板を増やす、階段をすべてスロープに変えるなどできる事は多いと思う。そして全盲の個人が盲導犬と一緒に電車に乗り込むということができやすいような慣習を作ることなどが大切だと思う。この議論も別の機会にメインのテーマとしてしていきたいと思う。

    また障害者と介助者が別々のジェンダーの場合どうしたらよいのか?という疑問が当然出てくると思う。仮に障害者と介助者が分かれて乗らなければならなくなった場合、これは間接的な意味で、障害者差別という制度になりかねない。ではどうするか、対策は二つある。

    (a)障害者、介助者はどの車両での乗ることができるようにする。(b)障害者と介助者のジェンダーが異なる場合はどちらかのジェンダーに合わせて乗れるようにする。

    私は(b)の方を採用したい。なぜなら、(a)の場合障害者の性欲を否定する可能性があるからだ。男性障害者の場合女性専用車両にも乗れるとするならば、健常者の男性が女性専用車両に乗れないことと矛盾が生じる。なぜこの矛盾が生じるのかというと、それは、障害者の男性は性犯罪を犯す可能性がないからということを前提にしているといえる。とするならば、それは障害者には性欲がないという議論にもなりかねない。私はこれは偏見だと思う。
    それを防ぐために、健常者男性・女性と障害者男性・女性の条件を平等にしつつも彼らの利益を損ねないためには、(b)の対策をとる方がより障害者の人権・アクセス権を守ることができるだろう。

    また男女専用車両、だれでも車両の比率については随意その利用者割合を調査しつつ補正していく必要があると思う。また「隔離」を原理主義的に行う必要はないと思う。その利用者の数に応じて車両を割り当てたとしても、もしかしたら、混雑率に差が出るかもしれない。その場合はどうするのかというと、例えば女性専用車両が極端に空いていて、男性専用車両が極端に混んでいる場合は、女性専用車両利用者の優先という原則は変えられないけれども、もし、その車両にいる女性が反対しないのであれば、男性がその車両を利用するのは混雑率が100%を超えない程度であれば認められるべきだとも思う。

    アファーマテイヴアクションは「サービス」ではなくて「正義」の問題だ。

    この様に、私はこの議論を「女性」のアクセス権に矮小化するのは反対であるし、また、その導入によって障害者の利益が損なわれることが無視されるということにも賛成できない。であるから冒頭の(3)には上記の理由で反対なのである。つまり、女性専用車両を導入するとしても、それが、男性あるいは他のジェンダーの人達、そして、障害を持つ人に対しての過剰な暴力とならないような配慮が必要なのである。「正義」の問題だからこそ一特殊集団の利益の拡大と思われないような形でのAAをする必要がある。だから慎重な制度設計が必要だ。

    アクセス権が脅かされているのは「女性」だけではないので、障害者も他のセクシャルマイノリテイの人の場合も同じなのだ、だからこれは「女性」の問題ではない、あるいはサービスという話でもない、「正義」のすべての人の自由の平等性問題なのだ。だからこそ、このアファーマテイヴアクションは先ほどの条件を守ったうえで実行されるべきだと思う。


    他者の自由の平等をどう確保していくかということに対する姿勢は自らの自由がどの程度他者から尊重されるかということを決定する要素といえるので、単純にマイノリテイ=「他者」の問題ではないのだ。これらの問題を「我々」の問題として共有できるようなリベラルな社会が望ましいと私は考えている。自由の平等性は社会の安定性に直接かかわってくる因子である。

    これらの問題を「我々の問題」と認識することができるようになるためには、自由の平等性に関する重なり合う合意が自律した市民間で形成されなければならない。14そして、そのために有効な認識装置が無知のベールによる自律した市民の反証的均衡への真摯な議論が必要である、(拒否するのは筋が通らない)(スキャンロン)という基準まで論議を尽くす必要がある。15そして、それは公共的理性の討議実践により正当化されなければならない。16

    Note
    1. 居長正広、川端多津子、寺野朱美、橋爪由紀 (2008)「女性専用車両の学際的研究」大阪府立大学大学院人間社会学研究科人間科学
    2.同
    3.同
    4.岡部千鶴(2004)「女性専用車両に関する一考察〜痴漢被害の実態とともに〜」久留米女子大学研究紀要、
     27、57〜66
    5.警視庁資料http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kouhoushi/no1/koramu/koramu8.htm#02
    6.同
    7.法務省法務総合研究所平成20年度案数調査http://www.moj.go.jp/content/000010429.pdf
    8.居長正広、川端多津子、寺野朱美、橋爪由紀(2008「女性専用車両の学際的研究」大阪府立大学大学院人間  社会学研究科人間科学
    9.同
    10.「痴漢犯罪No!鉄道利用者の会」http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Stock/4567/
    11.居長正広、川端多津子、寺野朱美、橋爪由紀 (2008)「女性専用車両の学際的研究」大阪府立大学大学院人間社会学研究科人間科学
    12.痴漢冤罪防止ネットワーク
    http://www.rikkyo.ne.jp/univ/araki/chikanenzai/shiryou.htm
    13.居長正広、川端多津子、寺野朱美、橋爪由紀 (2008)「女性専用車両の学際的研究」大阪府立大学大学院人間社会学研究科人間科学
    14.J.Rawls(1993)Political Liberalism, New York.
    15. ユルゲン・ハーバーマス(2004)「他者の受容」法政大学出版局
    16. 同

    スポンサーサイト

    • 2012.05.30 Wednesday
    • 11:43
    • 0
      • -
      • -
      • -
      • -
      コメント
      コメントする








          
      この記事のトラックバックURL
      トラックバック

      PR

      calendar

      S M T W T F S
          123
      45678910
      11121314151617
      18192021222324
      25262728293031
      << May 2014 >>

      ツイッター

      selected entries

      categories

      archives

      recent comment

      • 公共なき日本の肖像【1】〜よりよい連帯と幅広い教養のために
        japan photo blog (09/22)
      • 公共なき日本の肖像【1】〜よりよい連帯と幅広い教養のために
        avocadomustlive (06/01)
      • 生活保護狂騒曲:生活保護制度における偏見と恥。
        元・スリム (03/18)
      • 海外旅行に役立つ6つの注意点
        hideyuki ishida (04/17)
      • 海外旅行に役立つ6つの注意点
        hideyuki ishida (04/17)
      • 海外旅行に役立つ6つの注意点
        hideyuki ishida (04/11)
      • 美学としてのエル・クラシコ—芸術か狂気か:人格者プラトニストとしてのベップvs狂人マキャベリアンとしてのモウリーニョ
        teppei (03/22)
      • 「文明論の概略」から読む大学のグローバル化と二つの国際化について。
        yutakioka (02/27)
      • 「文明論の概略」から読む大学のグローバル化と二つの国際化について。
        aoi (02/15)
      • A Brief Summary of Exploring the Differences in Intelligence between Humans and Artificial Intelligence:from Turing to Searle.
        yutakioka (04/10)

      links

      profile

      search this site.

      others

      mobile

      qrcode

      powered

      無料ブログ作成サービス JUGEM